M チーム 山行記録

谷川岳は近く、そして遠かった
谷川岳東尾根


山行番号5859
山行地域谷川岳東尾根
山行内容
山行期間2002/12/13(夜) 〜 2002/12/15
参加人員L北山 有永 坪佐 名越


 本来はラッセルトレーニングが目的であった。が、案の定登攀主体の山行に成長し、目的意識をもったトレーニングも重ね、はじめての谷川岳に臨んだのだが……。

12月13日
 離阪 21時大阪集合。名神では50q規制などあって先が思いやられたが、その後は順調にすすみ、午前4時半土合の屋内駐車場着。着いたら夜明けとばかり思っていたので、あわてて仮眠場を探したところ、この建物の6階がロープウェイの出発ロビーになっていて、なんとオールナイトで暖房入り!さっそくシュラフに潜り込み、夜明けを待つ。

12月14日 晴れ
 東尾根 入山前に見た予想天気図の通り、抜群の晴天。当初副案に挙げていた西黒尾根など見向きもせず、ひたすら一ノ倉をめざす。寒気が強いが、歩き出すとほどなく暖まって気にならない。積雪深は約50p。トレースに助けられて、一ノ倉沢出合へ到着。トレースがなかったら、ここまで倍以上かかっていただろう。
 長い一日になりそうや……。雪煙にけぶる国境稜線は青空に吸い込まれ、はてしなく遠い。出合からは一ノ倉の全貌が仰ぎ見られ、黒々した衝立岩にむかう人影がある。ラッセルしてくれてありがとう。左手には3本の顕著な稜がのびるが、滝沢リッジ、一・二ノ沢中間稜、それに今回の取付となる一ノ沢左稜はいったいどれ?10分ほど一ノ倉沢をつめると左手から一ノ沢が合流、この点はすぐに解決する。ここへ来る間、水流が完全にうまっておらず、プラブを水没させてしまったのには少々へこんだ。
 さて、問題は東尾根へ取りつくルートをどうするか。計画では雪崩を警戒して、左稜に取りつくことにしていたし、夕べまでは相当な深雪を心配していたのであった。だが、ここへ来てみて、積雪量は確かに多いものの思ったほどの新雪でない。北面であるが故に比較的安定しているとの情報にも納得できる。ただし、本日は出発の時間を遅らせており、すでに8時半をまわっているのが気にかかった。これから日が上がるいっぽうだし、ラッセルにどれだけ時間がかかるかもわからない。計画通り左稜を行こうかと思ったが、ほんの少し詰めてみて様子をみることにする。少しだけ、少しだけ……。結局そのまま最後まで一ノ沢を登高することとなった。
 「ラッセルは前に足出すんやっ!」壁を崩し、膝を押しつけていると、もたもたするなと言わんばかりの檄が飛ぶ。そうは言っても、重荷に耐えての前屈姿勢では思うように足が出ない。ラッセルはおおむね膝程度、部分的に吹きだまったり、傾斜のきつい部分では腰上まで潜る。湿雪にヤッケを濡らし、重い足をひき上げて一歩、また一歩前進する。はぁ〜、長い。途中吹き溜まりの下に弱層が形成されてやらしい部分もあったが、4人の総力で突破、たっぷり3時間半をかけてシンセンのコルへ到着。わかんは、最後のルンゼの出口でトップが使用したのみであった。
 せまいコルでアイゼンをつけ、登攀体制を整える。一ノ倉岳のあたりには灰色の雲がわいてきている。このまま天気が崩れることはないやろうか?。はるかかなたのスカイラインに三角形のとんがった隆起がある。あれがトマノミミ?あと半日でどこまでいけるのか。「えっ、あんなに近いんか!?」と坪佐さん。
 いよいよ東尾根の登高開始、目の前の雪壁を乗り越す。雪はグズグズ。潜り込んだ足下には岩が露出し、気持ち悪いのでスタカットとする。2ピッチで第2岩峰の基部へ。写真で見たとおり、正面に右上する凹角がある。意気揚々と取りついてみたものの、出だしのハングが悪い。シュリンゲに乗ってみたり、アブミをかけてみたり。が、どうしても次の一歩が踏み出せない。ならば左のルンゼ状は、と見るものの、うすく被った雪は登る気にならず、そもそも取付までのトラバースがまず不可能。悪戦苦闘していると、坪佐さんから「あんまり無理せんと……。」悔しいけども、有永さんとバトンタッチ。
 だが、その有永さんもやはりハングを越えられない。一同じっと見守るだけ。そしてやはり左手へトラバース、ルンゼ状へ突入する。しかし数歩進んだところで、「雪が締まらへんし、岩が凍ってへんから引っ張ったら抜けてしまう。」とのこと。
 シンセンのコルはすぐ眼下だ。それも当然、たった2ピッチしか登っていないのだから。名越さんがつぶやくように、「2時間かけてここまでか……。」「……。」さすがに返す言葉もない。時間はすでに2時をまわっている。強引に前進しても、まず国境稜線にはたどり着けまい。そもそもザイルにつながっていないと歩けないような雪稜が、この先ずっと続くのであれば、明らかに自分にとって実力を越えている……。そう考えたとき、もはや選択の余地はほかになかった。つまり、これらの岩稜がすっかり雪で埋没し、かつしっかり締まっていないと、この尾根は手におえないのだ。なるほど、さまざまな記録が3月に集中しているのも頷ける。
 狭いルンゼで苦戦する有永さんには申し訳ないが、慎重に降りてきてもらう。「悲しいけど、引き返しましょう。」時に2時30分。名越さんと自分にとっては、この冬2回の山行で2度目の敗退。何となく一気に疲れが出てきたが、気持ちをきりかえ、下山に集中する。自分が気持ち悪くてザイルを出した斜面を、今度は下降するのだ。さすがに有永さんは「俺がラスト行ったる。」と頼もしい言葉。ブッシュや岩角でランニングを取りながら、慎重に下降する。
 再びシンセンのコルに降り立ったころには暮色も濃く、一ノ沢の斜面もすでに締まっていることだろう。念のため4人がザイルにつながったまま、一気呵成に下りきる。出合からは、衝立岩の基部を下降するパーティが見える。あれは今朝見かけた後ろ姿だろうか。やっぱり途中で引き返してきたのかなぁ。
 どっぷり日も暮れて、ヘッドランプをちらつかせて林道を下る。今日の寝床はあの暖房のきいたロビーだ。あわよくばレストランもあいてたりして……。

12月15日 晴れ
 帰阪 早朝6時、賑々しいBGMと照明で強制的に起こされ、まずは腹ごしらえ。そしてインフォメーションで温泉チェック。湯桧曽温泉街の「なかや旅館」だと、8時から営業しているとのことで、さっそく出発。実際には7時半に到着、快く入浴させてもらえた。今日は昨日にもましていい天気だ。ドライブだけでは惜しいほどだが、3月に再び相まみえることを決意して、谷川岳をあとにした。
 ちなみに往路・復路とも片道8時間の行程であった。はじめての谷川岳はラッセルトレーニングと偵察の意味で十分有意義だったし、そして意外にも十分週末の行動範囲であることがわかった。

(北山 記)


<行動記録>
11/14 土台 7:00〜一ノ倉沢出合 8:30〜シンセンのコル 12:00〜第2岩峰14:30〜シンセンのコル 15:40〜一ノ倉沢出合 16:50〜土台 18:00


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泉州山岳会